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第6章:有名セールスレター事例から学ぶ──本質を抽出して現代に応用する

本章で紹介するレターはどれも古いものですが、たった数本で累計数千億とも言われる売上を上げているものです。

そして、昨今のセールスレターと本質は変わっていないので、言ってみれば世界中のセールスレターの始祖です。

ウォール・ストリート・ジャーナルの「2人の男の物語」

世界でいちばん稼いだセールスレターと言われるほど有名なのが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の「2人の男の物語(Two Young Men)」。

訳文はこちらです。

読者の皆様へ:

 今から25年前の、すがすがしい晩春の午後。同じ大学を卒業した二人の若者がいました。彼らは非常によく似ていました。ふたりとも平均以上の成績で、社交的で、そして若い大学卒業生にありがちな、未来への大きな夢と希望に満ちていたのです。

 先日、その二人は母校の25周年同窓会に出席しました。

 やはり二人ともよく似ていました。どちらも幸せな結婚生活を送り、子どもが三人ずついました。しかも、卒業後は同じ中西部の製造会社に就職し、今でも同じ会社で働いています。

 しかし、一つだけ違いがありました。ひとりはその会社の小さな部署のマネージャーで、もうひとりは社長になっていたのです。

違いを生んだもの (What Made The Difference)

 あなたも私と同じように、「いったい何が人の人生にこのような違いをもたらすのだろう?」と考えたことはありませんか。それは先天的な知能や才能、あるいは努力だけの問題ではありません。成功を望むか望まないかの違いでもありません。

 違いを生むのは、「何を知っているか、そしてその知識をどう活かすか」です。

 そこで私は、あなたのような方々に『ウォール・ストリート・ジャーナル』についてお伝えしたいのです。それこそが『ウォール・ストリート・ジャーナル』の存在意義だからです。つまり、読者に「知識」を提供し、その知識をビジネスで活かしていただくためにあります。


他にはない独自の紙面 (A Publication Unlike Any Other)

 ご存じのとおり、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は他に類を見ない新聞です。アメリカ唯一の全国版ビジネス日刊紙であり、世界最大規模の経済ニュース専門スタッフによって、毎営業日編集・発行されています。

 そしてその紙面には、国や地域を問わずビジネスに関心を持つ人々にとって重要で興味深い情報が幅広く掲載されます。株式や金融だけでなく、ビジネス界が動くあらゆる分野のニュースを網羅し、必要なビジネス情報を「必要なとき」にお届けするのが『ウォール・ストリート・ジャーナル』なのです。


知識は力 (Knowledge Is Power)

 私は今、アメリカで最も多く読まれている一面を見ています。そこには、その日の重要ニュースと深掘りした特集記事が並んでいます。新たなインフレの動き、卸売価格、自動車価格、産業界向けの税制優遇、ワシントンなど各地の主要動向など、ビジネスニュースのあらゆる側面が取り上げられています。

 一面だけではありません。紙面をめくれば、ページの隅々に至るまで役立つ情報や興味をそそる記事が満載です。たとえば「マーケットプレイス」欄では、消費者の考え方や消費動向、企業が市場シェアを獲得するための競争戦略などが紹介されています。法務、テクノロジー、メディア、マーケティングに関する日々の特集や、中小企業経営の課題に特化したコーナーもあります。

 さらに『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、お金にまつわるニュースや統計を得るには最高の情報源でもあります。「マネー&インベスティング」欄には、読みやすい株式市場の一覧表やチャートがあり、「Abreast of the Market」「Heard on the Street」「Your Money Matters」といったアメリカでも特に影響力が大きく、熟読されている投資コラムが掲載されています。

 もし『ウォール・ストリート・ジャーナル』をまだ読んだことがないのであれば、その有用性は想像以上だと思います。

 しかも、『ウォール・ストリート・ジャーナル』でしか得られない情報が多いのです。全米各地の印刷工場から発行されているため、毎営業日早朝には最新号を手にすることができます。


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 同封の申込書に必要事項をご記入の上、同封の返信用封筒に入れてご投函ください。さらに『ウォール・ストリート・ジャーナル』には保証があります。もし購読開始後にご期待にそぐわないと感じられた場合は、いつでも購読を中止でき、残りの期間分の購読料は払い戻されます。

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 冒頭でお話しした大学のクラスメイト二人の話を覚えていますか。彼らは同じ日に大学を卒業し、同じようにビジネスの世界に飛び込みました。それなのに、なぜあれほど大きな違いが生まれたのでしょうか。

 それは「知識」。しかも「役立つ知識」と、それをどう活かしたかの違いです。


成功への投資 (An Investment In Success)

 『ウォール・ストリート・ジャーナル』を読み始めた途端に、即座に成功を手にできるとお約束することはできません。しかし、いつでも興味深く、信頼でき、ビジネスに役立つ情報を得られることは保証します。

敬具

PRK:id
Encs

追伸:
『ウォール・ストリート・ジャーナル』の購読料は、税金の控除対象となる可能性があります。詳しくは税理士等にご相談ください。








・・・お疲れ様でした。

まずは訳文を引用しましたが、さほど長くないこのレターが莫大な売上を上げたと言われています。
それでは、その“いまでも通用する本質的テクニック”をみていきましょう。

物語調が“読者の未来”を勝手に描いてしまう力──“自分ごと化”で大きな反応を生む

WSJのレターは冒頭で「同じ大学を卒業した2人の若者がいたが、25年後に大きな差が生まれた」という物語から始まり、読者を一気に引きこみます。

  • 読者は“同じ条件だったはずの2人がどうしてそんな違いを?”と気になり、先を読まずにいられない
  • 物語が進むほど「この差は自分にも降りかかるかも…」と自分ごと化していく

気づけば「どちらが勝者になれるかは“WSJを読んだかどうか”にかかっている」と自然に誘導され、

あ、私もWSJ読まないと…

と意識が向くというわけです。

今すぐ行動!タスク

  • あなたのセールスレターやLPで、“物語”を導入できそうな箇所があれば、あえて最初からストーリー仕立てにできないか考えてみましょう。
  • たとえば「同じ環境にいた2人が大きな差を生む…」という対比物語で、読者の“自分ごと化”を誘導できるかも。

差を誇張することで「どうして?」と疑問を誘発

同じ大学・同じ会社に就職した2人なのに、25年後には“片方が小部署のマネージャー、もう片方が社長”という極端な差が生まれたと描写しています。

  • 読者は「なぜそんな違いが?」と疑問を抱く
  • ストーリーの先を読み進めることで答えを知りたくなる

このように“二項対立”や“落差”を序盤から大げさに描くと、読者が最後まで読まずにいられない仕組みが作れます。

どんな商品でも、読者の現状理想の未来を対比させる手法はよく使われますよね。

それを冒頭に盛り込んで“どうしてそんな差が生まれるの?”と興味を引く形にするととんでもない効果が期待できるわけです。

今すぐ行動!タスク

  • 商品説明だけでなく、読者の“現状と理想”に大きな落差があることを冒頭で示せないか考えてみてください。
  • 「仕事が忙しくて疲弊している人」と「ゆとりを持って稼ぐ人」を対比するなど、読者が“なんでそんな違うんだろ?”と感じる構図を意図的に作るとストーリー性が高まります。

“ビジネス版分かれ道”を読者に重ねさせる──「このままでは…」と行動を促す

WSJのレターは“この差はウォール・ストリート・ジャーナルの購読をしたかどうかだ”と結論づけます。

読者は

“自分も社長と同じ成功を望むなら、WSJを読まないといけないのか?”

という発想に自然とたどり着くわけです。自然に必要性を感じるわけですね。

  • 最初から「WSJを読めば成功する!」ではなく、物語を使って読者が“勝手にそう思う”ように仕向けている
  • 読者の脳内に“私はどっち側に行きたい?”という問いが生まれ、「今すぐ申し込もうかな」と意欲が湧く

ここまでの流れでわかるのは、“ストーリー”や“対比”を使うことで読者が自分の未来を勝手に想像し、商品の必然性を感じられる点。

あなたのレターでも「もしこのサービスを使わなかったら、◯年後にどんな差が生まれる?」と考えてみると、類似の構成を作れます。

今すぐ行動!タスク

  • あなたの商品を使う未来と使わない未来を対比させる表を作り、「ビジネス版分かれ道」のイメージで少し文章にしてみてください。
  • それを“読者が勝手に連想できる形”で書くと、WSJのように読者を自発的に行動させやすくなります。

ジョン・ケープルズ「ピアノ広告」から学ぶ

次は、セールスライターのジョン・ケープルズの有名コピー「They Laughed When I Sat Down At The Piano… But When I Started to Play!」を紹介します。長いので、ピアノ広告とかピアノコピーと呼ばれています。

多分「2人の男の物語」と同じぐらい語り継がれている名作です。

以下が訳文です。

私がピアノの前に座るとみんなが笑いました。でも弾き始めると…!

 アーサーが『ロザリオ』を弾き終わった。室内には拍手が鳴り響いていた。私はこの場を、自分のデビューを飾るドラマチックな瞬間にしようと決心した。友人全てが驚き呆れる前を、私は自信たっぷりにピアノに向かって歩みを進め、その前に座った。

「ジャックはくだらない、イタズラを企んでいるんだ」と誰かがクスクスと笑った。聴衆も笑った。彼らは皆、私が一音たりとも弾けないと確信していた。

『彼は本当に弾けるの?』と、ある少女がアーサーに向かってささやいているのが聞こえた。アーサーは「弾けるわけがない!」と叫んだ。

「彼は人生でピアノを弾いたことなんて一度もないさ…でも、見てみろよ。これは面白いことになりそうだ」

 私はこの状況を最大限に楽しむことにした。あざけりの中、私は貫禄たっぷりにシルクのハンカチを取り出し、ピアノの鍵盤のチリを軽く払った。そしてかつて見たことがある、パデレフスキというピアニストのモノマネが、寄席の寸劇でやっていたように、立ち上がって、ピアノの椅子を4分の1回転させた。

 後ろの方から「彼の演技をどう思う?」という声が聞こえた。

「面白いじゃないか」と呼応する声が上がり、聴衆は大笑いだった。

そして私が弾き始めると

 一瞬にして聴衆は張り詰めた静けさに包まれた。

 まるで魔法にかかったかのように、笑いは彼らの口元から消え去った。

 私はリストの不朽の名作『愛の夢』の1小節目を弾いた。

 聴衆が驚きで息を呑むのを感じた。私の友人はうっとりして固唾を呑んで座っていた。

 私はピアノを弾き続け、そして弾いているうちに、周りに人がいることも忘れていった。私は時間も場所も、息も漏らさぬ聴衆のことも忘れていた。自分の住むちっぽけな世界は次第に薄れ、ぼんやりとしてきて、現実のものではなくなったように思えた。音楽だけが現実のものだった。音楽と音楽がもたらす幻影だけが私を包んでいた。その幻影ははるか昔、偉大な作曲家にひらめきを与えた、風にたなびく雲のように美しく、漂う月明かりのように移ろう感じのものだった。それはまるで偉大な作曲家自身が音楽を通して私に語りかけている、言葉ではなく和音で語りかけているようだった。文章ではなく洗練されたメロディを通して。

完全なる勝利

 『愛の夢』の最後の旋律がゆっくりと消えていくと、室内にはいきなり拍手喝采が響き渡った。

 気がつくと私は、興奮した顔の聴衆に囲まれていた。友人たちの興奮といったら! 男たちは私と握手をし、荒々しく祝福を表し、熱狂的に私の背中をドンドン叩いた。誰もが喜びの声をあげ、矢継ぎ早に質問してきた。

「ジャック!どうしてこんなにピアノが弾けることを今まで教えてくれなかったの?」

「どこで習ったの?」

「どれくらい習っていたの?」

「先生は誰?」

 それに対して私は「一度も先生についたことはないよ」「少し前まで全く弾けなかったよ」と答えた。

「冗談はよせよ」と熟練したピアニストであるアーサーは笑った。

「君は数年間習っていたに違いない、分かるさ。」

「ほんの短期間習っていただけだよ」と私は言い張った。

「私は君たちみんなを驚かそうと思って内緒にしていたんだ」

そして彼らに全てを話した。

「U.S.音楽スクールという名前を聞いたことはあるかい?」と聞いた。友人の何人かは頷いて、「あそこは通信制の学校だよね?」と聞いた。

「その通りだよ」と答えた。

「その学校では、どんな楽器でもたったの2~3ヶ月、楽譜だけで弾けるようになる、新しく簡単な方法を提供しているんだ」

どうやって先生なしで
ピアノの弾き方を習ったのか?

 それから私が何年もの間、ピアノを弾くことに憧れていたことを話した。

「ほんの少し前のことだったと思うんだけど」と私は続けた。

「1日わずか数セントで楽器を習う新しい方法をうたったU.S.音楽スクールの興味深い広告を目にしたんだ。その広告には、ある女性が、家で空いた時間を見つけて、しかも先生なしで、どうやってピアノをマスターしたかが書いてあったんだ。特に、彼女が実践したその素晴らしい方法は、骨の折れる味気ない音階練習や、退屈な練習も必要なかった。これはとても説得力があるように思えたので、無料でもレッスン申し込み用のクーポンに必要事項を書き込んで送ったんだ」

「すぐに無料冊子が届いて、その夜早速でもレッスンを始めた。私はこの新しい方法でいかに簡単にピアノを弾くことができるかを知って驚いた。そしてコースに申し込んだのさ」

「教材が届いた時、広告でうたわれていた通り、アルファベットのABCを習うくらい簡単だということがわかった。そしてレッスンが進むにつれ、どんどん簡単になっていった。いつの間にか私はお気に入りの曲を、通しで弾けるようになっていた。もうやめられなかった。バラードもクラシックもジャズも同じように簡単に弾けた。音楽の特別な才能など全くなかったのに」

どんな楽器も弾ける

 あなたも独学で、自宅で、通常の半分の時間で、熟練したミュージシャンになることができます。すでに約50万人もの人たちに示した、好きな楽器を楽譜だけで弾くこの簡単な方法は間違いのないものです。

 あなたに特別な才能が必要だという古びた考えは忘れましょう。パネルに書いてある楽器のリストを見て、どれを弾きたいか決めてください。

そうすれば、後のことはU.S.音楽スクールにお任せください。どの楽器を選んでいただいても良いことを覚えておいてください。どれを選んでも料金は同じ。1日数セントです。初心者でもすでに優れた演奏家であってもかまいません。この新しく素晴らしい方法にご興味を持っていただけるでしょう。

無料冊子とデモレッスンをお取り寄せください。

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・・・お疲れ様でした。

結構長いですよね(笑)

“笑われたけど…”が読者の目を奪う──誰もが抱える恥と成功のギャップ

この広告の冒頭フレーズは「彼らは私がピアノの前に座ったとき笑った。でも、弾き始めると……」という衝撃的な逆転劇。

読者は“何が起きたの?”と一気に興味を引かれます。

  • 最初に“笑われる”ネガティブ要素を出す
  • そこから“実はめっちゃうまかった”というギャップを提示

人は“下克上”や“ギャップストーリー”、“逆転劇”に弱いので、このレターに食いつかずにはいられません。


読者は

自分もそんな逆転劇をやってみたい

と感情移入して読み進めるわけですね。

今すぐ行動!タスク

  • あなたが語るストーリーに“ネガティブからの逆転”要素を入れられないか考えてみましょう。
  • 「笑われた」「馬鹿にされた」「最初は◯◯で失敗した」といった始まりにするだけで、読者が“でもその後どうなる?”と読み続けやすくなります。

恥ずかしさと“称賛欲”のギャップを突く──心の奥底にある“変わりたい”を刺激

ピアノ広告のストーリーは

  • バカにされる自分
  • 皆を驚かせる天才的スキル

という両極を描き、読者の潜在的な“こんなふうに称賛されたい”願望を刺激します。

  • 多くの人が「下手だったら恥ずかしいけど、もし上手く弾けたらカッコいいな」と夢見ている
  • その状態を物語仕立てで見せられると“自分にだってできるかも”と期待が膨らむ

あなたの商品でも“失敗が怖くて踏み出せない”層に、“実は簡単に成功を味わえるシーン”を見せられれば、似たような効果を狙えます。

物語として“はじめは不安だったが、やってみたら周りに称賛された”という成功イメージを演出し、読者自身の承認欲求に語りかけるわけです。

今すぐ行動!タスク

  • あなたが販売する商品・サービスで、“恥ずかしさ”や“失敗への恐れ”を感じる読者はいないでしょうか。
  • その恐れを超えて“周囲から称賛を得られるか”を、簡単なストーリーにまとめてみてください。
  • 恥をかかないで成功する道があると示すだけでも読者の心は動きます。

応用:スタート地点をわざと低く設定する──大逆転ストーリーで「私でも出来る」を生み出す

このピアノ広告は、はじめは「笑われるほどダメだった私」を出してきて、そこから華麗に逆転する流れを作っています。

これは読者に“こんなダメだった人でも成功できたんだから、自分もイケるかも”と思わせる仕掛け。

わざと低いスタート → 成功を勝ち取る
→ 読者の尊敬や共感を誘発

あなたも「実は◯◯すら全然できなかったんです。周囲にバカにされるほど…」と語った上で、“でもこの商品に出会って変われた”という展開をレターに取り入れられないか考えてみてください。

割とありがちですけどね。

ただ、読者理解ができていれば分かっているとは思いますが、読者はあなたのようにいろんなセールスレターを見たことがある人ではないのです。

人は才能あふれる天才の話より、かつては自分より下に見えていた人が大成功したほうが“自分にもチャンスがある!”と熱狂しやすいものです。

今すぐ行動!タスク

  • 商品の効果を説明するとき、スタート地点の低さを具体的に表せないか考えてみましょう。
  • “かつては◯◯すらできなかった私”や“はじめはこんな恥をかいてた”という逆転ストーリーを盛り込むことで、読者の心がグッと動く可能性があります。

“Do You Make These Mistakes in English?”から学ぶ注意喚起

もう一つ有名な例が英語教材のレター「Do You Make These Mistakes in English?」。
こちらは読者の“まだ気づいていない恥ずかしいミス”を突き、“不安をかき立てる”スタイルのレターです。

早速ですが訳文です。

あなたは英語でこんなミスをしていませんか?

 シャーウィン・コーディの驚くべき発明によって、11万5000人以上の人々が英語の間違いを正すことができるようになりました。

 1日たった15分で、あなたの「話す力」と「書く力」を改善することができます。

 多くの人が”Have you heard from him today?”と言うべきところを、”Did you hear from him today?”と言います。また、”Calendar”のスペルを”Calender”や”Calander”と書いてしまいます。

 さらに、”Between you and me”と言うべきところを”Between you and I”と言う人もいます。”Whom”を使うべきところで、しばしば”Who”を間違えて使ったり、ごく簡単な単語の発音間違いが頻繁に起こったりするのには驚きます。

 また、1つか2つのc、m、rがつく特定の単語の場合。「ie」か「ei」のどちらのスペルにすべきかを知っている人はごく少数派です。ほとんどの人々は、変化の乏しい、単調で、ありふれた言葉を使います。そのような人の話し方や手紙は、生気がなく、単調で、退屈なものです。

 彼らは、話したり書いたりするたびに、極めて重要な英語のポイントが抜けていることをさらけ出してしまいます。

素晴らしい新発明

 何年もの間、コーディ氏は正しい英語を使う本能的な習慣を作り出すという難問について研究しました。そして、数えきれないほどの実験の結果、ついに彼はシンプルな方法を発明したのです。それは1日たった15分で英語をより自由に使いこなす力が身に付く方法です。

今こそ、あなたを不快にさせてきた間違いをやめることができるのです。コーディ氏の生徒たちは、古い教え方では2年かかるところを、5週間で確かなものにしました。

文法ではなく習慣で学ぶ

 古い教え方では、文法を覚えさせられますが、正しい習慣はできません。しまいには、文法そのものが忘れ去られてしまうのです。新しいシャーウィンコーディの教え方は、練習問題をやることで、正しい習慣形成を可能にするのです。あなたは15分間で50個の質問の答えを書き、もう5分で答え合わせができます。コーディ氏のおかげで、退屈な書取りはもう終わりです。あなたは、正しく書いたり話したりすることが「第2の習慣」になるまで、いつも自分自身の間違いだけに集中すれば良いのです。

無料 英語についての小冊子

 コーディ氏の驚くべきメソッドを解説した新しい小冊子が準備できています。もしあなたが今までに、文法、スペル、句読点、発音の間違いで恥ずかしい思いをしたことがあるなら、あるいは、あなたのアイデアを表現する適切な言葉を使いこなせないのなら、この新しい無料小冊子『どうすれば、1日15分で正しい英語がマスターできるのか』があなたに驚くべき新発見をもたらすでしょう。クーポンまたは手紙、官製はがきを今すぐにお送りください。業者が電話することはありません。



・・・お疲れ様でした。
それでは早速、今でも活かせそうな部分を掘り出していきましょう。

シンプルな“問題提起”が呼び起こす恐怖と行動──自分も当事者かもしれない焦り

タイトルの「あなたは英語でこんな間違いをしていませんか?」という問いだけで、読者は「あれ、もしかして自分も?」と不安になります。

  • 具体的な誤用例やスペルミスをいくつか並べ、読者は「うわ、自分もたまにやってるわ」と焦る
  • 最後に「そんなあなたでも、簡単にそれを正せる新しいメソッドがあるんですよ」と解決策を提示

形としてはPASに似ています。

そしてこの流れは、SNSの短文でも有効です。
「◯◯ってミスしてませんか?」と問いかけ、読者が“自分ごと”に思えたら続きを読ませると。

非常にシンプルかつ強力な仕掛けなんですよね。

今すぐ行動!タスク

  • 読者が意識していないけど、実はやっている問題を一つ考えてみてください。(読者理解にもつながる)
  • 「あなたは◯◯しちゃってませんか?」と短文で問いかけるSNS投稿やレター導入部が作れないか検討してみましょう。
  • そこに“解決策”をつなげる構成にすれば、読者が“知りたい!”と食いつく。

問題を大げさに煽りすぎない──読者との信頼関係を壊さないバランス感覚

もちろん“不安煽り”にも限度があります。

英語教材のこのレターが成功したのは、読者の実感に即した“本当にやりがちな誤用”を引き合いに出したから。

  • 「あなたは宇宙人に狙われているかも」と書いてもほとんど響かない(そういうターゲティングなら話は別ですが)
  • 「あなた、死にますよ!?!?」と言われても普通に嫌なので閉じる。
  • 「◯◯なミス、実はしょっちゅう見かけます」くらいの現実感が大事

あなたの商品でも、不安を煽る前に“それを読者がどの程度リアルな悩みと感じるか”をしっかり考えましょう。

現実味のない問題だと読者が冷めるし、現実味はあってもあまりに過剰な表現は信頼を失うリスクがあります。

ここでも、「読者目線」を理解しておくことが非常に重要になってくるわけです。

今すぐ行動!タスク

  • “読者が実際に抱えている恐怖や失敗の可能性”を一つ書き出し、それを大げさすぎずリアルに示せるか検討してください。
  • 「本当にあるあるだ」と思われる範囲で問題提起し、解決策にスムーズにつなげる形を探してみましょう。

短い疑問文が突破口になる──最小の文字数で最大の不安を煽る

そもそもこの広告のタイトル
「Do You Make These Mistakes in English?」は、たった1行で読者の脳を揺さぶります。

疑問形を使うと、人は答えを頭の中で探そうとして関心を強める性質があるんですよね。

  • “疑問→あなたも当てはまるかもよ?”

⇒ 読者が“私には関係ないかな?当てはまるかな?”と瞬時に自己診断し始める

SNSでの冒頭やメルマガ件名にもこの手法は応用可能。

ただし疑問を投げるだけでは読者は不安なまま。「続きはこちらで」や「解決策は◯番目に書きました」と導き、行動できるように繋げてあげないと不親切なので嫌われます。

今すぐ行動!タスク

  • あなたの文章のタイトルや冒頭に、読者が“自分に当てはまるかも”と考えそうな短い疑問文を作れないか考えてみてください。
  • できれば2〜3パターン考え、SNSやメルマガでABテストしてみると効果を実感できるかもしれません。

ロールス・ロイスのコピー──数字ではなく“象徴”で語る

最後に一例として、ダイレクトマーケティング界の有名なキャッチコピーを紹介します。

「時速100kmで走る新型ロールス・ロイスの車内で聞こえる最大の騒音は、時計の秒針の音でした。」

たったこれだけ。でもこれだけで“ロールス・ロイスは桁違いに静かで高級”というイメージが強烈に伝わりますよね。

「時計の秒針が最も大きい音」という衝撃──聞いただけで超高級をイメージさせる天才技

ここでは騒音レベルのdB(デシベル)なんて専門用語は一切使われていません。
一文だけで“想像を掻き立てる”力は凄まじい。

  • 数字やグラフを並べる代わりに“秒針の音”を引き合いに出して、読者に“とんでもない静寂感”を一瞬で体感させる
  • 専門的な騒音対策の説明をする必要がなく、むしろ余白が読者の想像力を刺激

“一言ですべてを象徴させる”技術を意識するとインパクトが大きくなるのがよく分かります。

長々とスペックを説明されて、「ほら、このくらい静かなんだよ」と言われても伝わるかもしれませんが、インパクトは薄い。

たとえばスペックの列挙に頼らず「◯◯が静かすぎて××が聞こえるレベル」など、比喩や象徴で語ってみるわけです。

ネットスラングでも「ガンジーでも助走つけて殴るレベル」という古典(?)がありますが、「そのくらい常識はずれでやばいんだな」というのがよく分かりますよね。

今すぐ行動!タスク

  • 商品・サービスの“最大の特徴”を、数字ではなく“象徴的な一言”で表せないか ブレインストーミングしてみてください。
  • 例:「騒がしい部屋でも眠れるくらいの柔らかさ」「××と見間違えるほど◇◇なデザイン」など、なるべく印象的なフレーズを考えてみましょう。

“描写”と“余白”が読者の想像力を掻き立てる──数字に頼らずステータスを訴求

ロールス・ロイスの例は、デシベルやエンジン構造を一切説明しないことで、むしろ読者の脳内に“究極の静粛性”を形成しているのがポイント。


これは“引き算”のテクニックで、読者が自由に高級感を補完する余地を与えているとも言えます。

  • 足し算でスペックを並べる→読者が「ふーん、そうなんだ」と淡白に感じる
  • 引き算で“想像をかき立てる”→読者が「どれだけ高級なんだろう?」と勝手に盛り上がる

高級品や感性に訴える商品だと、下手に細かい技術説明をするより、このような象徴的フレーズが大きく響くケースもあるわけです。

商品の出し手側が、詳細に説明しすぎてしまうと、
「そこが読者にとっての商品の上限値」になってしまう。
逆に読者に想像させる形にすれば、読者が感じる商品の価値は無限大にもなりうる。ということです。

今すぐ行動!タスク

  • あなたの商品説明は、詳細スペックや数字の羅列に頼りすぎていないか確認してみましょう。
  • とくに感性面を大事にする場合は、ロールス・ロイスの秒針のような“一句”をあえて用意し、読者が自発的に高い価値を感じる余白を作れないか考えてみてください。

古典事例を“どうやって”現代に活かすか

これら古典的コピーは、「昔のものだから」今読む意味あるの? と懐疑的な思いもあるかもしれません。

ですが、人間の深い心理はそう簡単には変わらない。

だからこそ、今なお教科書的に研究され、成果を上げ続けているわけです。

ただのコピーではなく“根底の心理トリガー”を模倣──形だけ真似ても効果は薄い

WSJ、ピアノ広告、英語教材、ロールス・ロイスなど、いずれも「表現」をそのまま真似しても今の読者には通じないはずです。

重要なのは“人間の心をどう動かすか”という仕組みです。

  • WSJ:落差のある対比で“2人の男”が辿る運命を描く→読者の想像を刺激
  • ピアノ広告:笑われた→逆転というギャップ→恥をかきたくない+称賛されたい欲
  • 英語教材:シンプルな疑問文で“焦り”を生む
  • ロールス・ロイス:象徴的な一文で読者の脳内イメージを掻き立てる

もしあなたの商品の訴求を考えるとき、“同じ発想”をどう自分のターゲットにあてはめられるか? を考えてみると、古典からだからこそとんでもないヒントを得られます。

今すぐ行動!タスク

  • 古典で気になった要素をひとつ選び、自分の商品に当てはめる形で数行のメモを作ってください。
  • たとえば「ピアノ広告の構成を、SNS投稿で逆転ストーリーにアレンジする」など。形ではなく心理トリガーを模倣すると、一気に現代向けに落とし込みやすいです。

読者の属性・媒体に合わせたアレンジ──時代やプラットフォームにフィットさせる

古典は新聞やDMなど“紙媒体”が前提だったり、文体に時代を感じさせる部分があります。

だからきっと、今回紹介した文章たちも読みづらかったかと思います(笑)

現代はSNS、LP、メール、チャットなど多彩なので、長文→短文、紙→デジタルなどの圧縮や拡張は必須です。

  • WSJ的“対比”を10ポストのスレッドで描く
  • ピアノ広告の“恥〜逆転”をメルマガの冒頭で短く展開
  • ロールス・ロイス的“象徴の一文”をLPのキャッチコピーにする

いずれも“媒体に合わせた表現・長さ・ビジュアル”で再構築してこそ効果が出るわけです。

今すぐ行動!タスク

  • 古典コピーのどれか好きなものを選び、現代のSNSやLPで使うならどうアレンジするか考えてみてください。
  • 実際に10行ほどのサンプル文を書いてみると、“紙”から“Web短文”へ変換する感覚を掴めるはずです。

名作から“お気に入りの一行”を切り出して自分の型を作る──エッセンスを抽出し自分流に

そっくり真似ても仕方ないですが、“お気に入りの一文”を切り出して参考にするのはおすすめ。

  • WSJの「2人の男」→“◯年前に同じ状況だった2人が、なぜこんな差に?”
  • ピアノ広告→“みんなが笑ったとき、私はピアノに向かって…”
  • 英語教材→“あなた、◯◯なミスしてませんか?”
  • ロールス・ロイス→“車内でいちばん大きい音は◯◯でした”

このように、エッセンスを抽出し“自分の読者に響く形”で再構成するのです。

そうすれば古典の強力なフックや構造を借りながらも、あなた独自の文体や媒体で自然に活かせるはず。

今すぐ行動!タスク

  • 先に挙げた古典事例から“これ好きだな”と思えるフレーズを1行ピックアップし、それをあなたの商品向けに言い換えられないか挑戦してみてください。
  • たとえばWSJっぽい対比、ロールスっぽい象徴的フレーズなど、ちょっと試作してみると自分の型が見えてくるかもしれません。

まとめ──古典コピーのエッセンスを活かし、“時代を超える”文章力を手に入れる

古典が語る“普遍のエッセンス”は現代でも強力──人間心理は簡単に変わらない

WSJやピアノ広告、英語教材広告、ロールス・ロイスのヘッドラインなど、いずれも何十年も前のセールスコピーですが、未だに名作として語り継がれていますし、これから先もこれら名作の系譜から更なる名作が生まれ続けるはず。

なぜなら、人間の深層心理欲求のツボはそう簡単に変わらないから。

  • “大きな差がつく”対比
  • “笑われたけど一発逆転”ストーリー
  • “あなた◯◯してませんか?”という問題提起
  • “秒針の音しか聞こえない”という象徴的表現

どれも読者の感情を動かし、最後まで読ませる仕掛けになっています。

これをSNSやLPに合わせて再構成された投稿やレターが、現代の読み手にも十分効果を発揮していますよね?

表面的な古い言い回しを真似るだけで終わらない──本質を捉えれば“稼げる”武器に

ですが何度も言うように、文体や古い表現をそのまま真似しても“時代錯誤”になりかねません。

大切なのは心理トリガーや構造を理解し、現代のメディアやターゲットに合った形で使うこと。

  • WSJは“落差の対比”
  • ピアノ広告は“恥と称賛欲のギャップ”
  • 英語教材は“問題提起による不安刺激”
  • ロールス・ロイスは“一行の象徴表現”

この根底の仕組み、いわゆる本質さえ掴めば、SNSであろうとメルマガであろうとLPであろうと、自由に応用が可能です。

次章へ:テンプレート・フレーズへ落とし込む──先人の知恵であなたも自在に書ける

第6章では古典の事例を通じて“売れるセールスコピーの骨組み”を再確認してきました。

第7章では、さらに具体的なテンプレートやフレーズ集をお見せし、どう実践に組み込むかを詳しく解説します。

古典の事例を参考にしつつ、第7章で紹介する“テンプレート”を組み合わせれば、あなたもいつ・どの流れで・どんな言葉を使えば読者が動くかが腹落ちするはずです。

ぜひ古典のエッセンスを楽しみつつ、第7章のテンプレを使って“自分なりの現代版の名作コピー”を生み出してみてください。

>>次は第7章です。

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